ネタバレ全開!竜とそばかすの姫を評価する話。

7月 19, 2021

ついに、細田守監督が製作した「竜とそばかすの姫」が公開されました。

普段映画の感想を記事にしたりはしない私ですが、色々と思うことがあったため記事にまとめることにしました。

これからこの映画を見ようと思っている方や、映画をもう見た方々は最後まで読んでいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

作品情報

「竜とそばかすの姫」は、「時をかける少女」、「サマーウォーズ」をきっかけに有名映画監督の仲間入りをした細田守監督による6作目の映画となります。

同監督による最近の作品としては「バケモノの子」や「未来のミライ」がありますが、大ヒットしたかと言われると、正直う〜んとなってしまうところ。

今回の作品は「サマーウォーズ」と同じ世界観を持つということで、サマーウォーズに続く大ヒットとなるか!?といった期待が膨らむところです。

私が本作品を見ようと思ったきっかけ

「竜とそばかすの姫」は現実世界と仮想空間の両方を舞台にした物語となっており、同監督が2009年に発表した「サマーウォーズ」とそっくりな世界観を持っています。

あれから12年。人々が携帯するデバイスはガラケーからスマホになり、仮想空間という単語もだいぶ聞き慣れたものになりました。

私は細田守監督の作品が特別好き!というわけではないのですが、サマーウォーズは話の構成がとてもしっかりしていて大好きです。作画が良いのはもちろんなのですが、登場人物全員で悪いやつを追い詰めていく過程がとても自然で何回見ても感動してしまうんですよね。

そんなわけでサマーウォーズにはそれなりに思い入れがあるのですが、「竜とそばかすの姫」の公開日に宣伝も兼ねてサマーウォーズが金曜ロードショーで放送されまして、それで感動した私はまんまと釣られて本作品を予約してしまった訳であります。

ここから先はネタバレ全開、批判も多めになってしまいますがその前に一言、本作品はお金を払って観にいく価値は十分にあります。(偉そうな口調ですみません)

それでは作品の評価に移る前に、ざっくりと作品のストーリーを説明しましょう。

あらすじ

以下、ネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方は…申し訳ありません。

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主人公は仮想空間で「Belle」という名前で歌い手のような活動をしており、世界的な人気を誇っています。

ある日Bellは仮想空間にて大規模ライブを開催しますが、そこに「竜」が乱入、警備隊と大バトルを繰り広げ、その日のライブは竜にムチャクチャにされた形で終わってしまいます。

どうしても「竜」の正体が気になるBelleはなんとかして竜と接触し、誰にもいえない秘密を隠していることを確信します。

現実世界で竜と会って話をしたい。竜を助けたい。

主人公は友人や周囲の大人たちの力を借りて現実世界の「竜」と画面越しに会い、シングルファーザーによる虐待を受けている状況を知ります。

居ても立っても居られない主人公は電車に飛び乗り、竜の家へ。ついに竜と出会った主人公は、力になるよと抱きしめて、一人の少年を救ったのでした。

総評

脚本:★★☆☆☆
作画:★★★★★
演技:★★★★★
歌 :★★★★★

正直サマーウォーズを比較するとストーリーは高評価にはできないかな〜といったところです。

ただ脚本を除けば素晴らしい映画なのは間違い無くて、色々な3Dモデルのキャラクターが縦横無尽に仮想空間を駆け回るのは見ていて面白かったし、サマーウォーズから技術も進歩したなぁ…としみじみ思いました。

それでは、これらの評価につながった映画の良かった点、悪かった点を紹介します。

良かった点

最新技術で動きまくる3Dモデル

本作品の舞台は現実世界と仮想空間です。

主人公は現実世界ではイモくさい田舎の女子高生で、アニメ絵のような作画で表現されていますが、仮想空間において主人公はBelleとなり、すべて3Dモデルによって動きが表現されています。

圧倒的に緻密な3Dモデルが髪の毛や口元までぬるぬる動きまくるのは流石としか言いようがないです。

VTuberがどこかぎこちなく動いているのとは訳が違い、本当にモデルに魂が乗り移ったかのようなリアル感です。

ま、ディテールに凝ったウマ娘って感じですかね。

現実世界の人々を描画するやさしいタッチ

これは個人的な内容かもしれないですが、細田守監督の作画は決して最新の絵というものではありませんが、いい感じに人を優しく、かわいく、カッコよく表現できていると思います。(日本人ウケしそうな感じ。)

特に主人公は作中では田舎くさくて不細工で平凡な女子として扱われていましたが、私はかなりかわいいと思いました。ナチュラルボブは最強。

主人公「Belle」の圧倒的歌唱力

仮想空間で歌い手として有名になるということで、主人公にはシンガーソングライターの方(中村佳穂さん)が起用されています。

劇中でもミュージカルのように4〜5回歌唱シーンが入りますが、透き通っているのに非常に力強い声で感情を大きく揺さぶられます。

特に最後の方で主人公が素顔を曝け出しながら世界中に歌を届けるシーンは、思わずこちらも涙が溢れてきました。

今回は作曲にKing Gnuの方がいたり、声優にYOASOBIのボーカルの方がいましたので、収録の時にいろいろと指導をしていただくなんてこともあったのかもしれません。

中村佳穂さんの今後に期待大、ですね。

良くなかった点

世界観のスケールに対して、物語のスケールが小さすぎる

物語のもう一つの舞台である仮想現実は、世界中の人たちがアクセスすることが可能、何億ものアカウントが存在する超巨大なネットワークです。

サマーウォーズのときも世界観はほぼ同じで、このときはAIが暴走することによって世界のどこかに衛星が落とされてしまうという人類を巻き込んだ騒動が勃発しました。

サマーウォーズを見た人間からすれば、今度は何が起きるんだろう?もっと人類を揺るがすようなヤバい事件が引き起こされるのかな?ソードアートオンラインでは仮想空間に接続した人が現実世界に戻れなくなったけど、それ以外となると一体何が起きてしまうんだろう…!?と勝手な想像をしてしまうわけです。

今回竜とそばかすの姫で起きる事件はざっくりといえば「個人の虐待」です。

もちろん虐待は現代社会に蔓延る重要な課題の一つです。今も世界中で虐待に苦しんでいる人はどこかにいます。

ただ世界中を巻き込んだテーマを扱うのであれば、もっと大きな事件を誰かに起こして欲しかったのが正直な感想です。一個人の虐待を課題に設定するのであれば、舞台は精々地域レベルでも良かったのではと思ってしまう。

物語に関わる人物が日本人のみ

前述の通り、仮想空間には世界中の誰でもが接続することができます。

当然日本人以外もいて少なくとも言葉の壁は存在するはずですが、そこは翻訳ソフトが入るようで、別の言語の会話が日本語に変換されるような描写があります。

だからこそ「Belle」が出会った「竜」は何人であるか分かりません。常識的に考えれば日本人である可能性は非常に低く、また男性であるかすら分かりません。

竜を特定する過程に無理があったのは置いておいて、竜がたまたま日本人で、たまたま居場所も特定できて、電車に飛び乗って現地に行ったらマジで竜と会えたというのはあまりにも運命的すぎやしませんか??

もしも竜がアメリカの少年だったらどうしますか?英語は通じないかもしれないし、そもそも現地に行くための交通手段が分からないかもしれない。スマホの電波もどうすればアメリカで通じるのか?そう言った課題に対して大人が相談に乗ってくれたら、物語の評価も変わったかのしれません。

なお一個人を特定する過程はデスノートがかなり秀逸で、この物語ではエルという人物がデスノートの使用者を特定しようとしてくるのですが、エルはデスノートが使われる時刻から主人公の国籍を日本と推定、地域別にテレビ放送の時間をずらして主人公が反応した時刻から関東に住んでいることを特定するという中々隙のないロジックを組み立てていました。

最終的に問題が解決したのか不明

主人公は虐待を受けていた子供と合流し、虐待をしていたシングルファーザーを目力で退けます。ここでシーンは終わりますが、これで虐待は解決したのでしょうか…?

結局虐待を受けていた子供はこれから虐待を受けていた家に帰ります。父親との関係は改善されるかもしれませんが、果たしてそううまく事は進むでしょうか?

もし子供が父親に反抗した場合。例えば父親が家を出て行ってしまったらどうなるでしょうか?

子供は家に残っているものを使って数週間は生活できるかもしれませんが、基本的に子供が生きていくには保護者が必要です。

本当に虐待されている子供を救いたいのであれば、施設にあずけるか、主人公が子供を引き取るなどをしなければならなかったのではないでしょうか。

正直な話、私がこの物語の主人公だったら、この子供に対してどうしてあげれば良いのか分かりません…。結局話を聞くことしかできないのかもしれません。

一部の登場人物に役割がほとんどない

https://www.cinemacafe.net/article/2021/05/07/72688.html

本作品では主人公の高校の友人たちや、合唱隊のおばちゃんたち、主人公の父親がキーキャラクターとして登場します。

ルカちゃんはかわいいし、カミシンみたいな熱血バカは大好きなキャラなので活躍して欲しかったのですが、劇中ではほとんど事件にはかかわらず。竜の特定においては完全に空気でした。本編には関係のないところで告白イベントが起きて、そこでは目立っていたかなという印象です。

もっとひどいのは合唱隊のおばちゃんたちですね。中盤で突然出てきて混乱しましたが、終盤でも特に見せ場はなし。車の運転をしてくれたモブと言っても差し支えないでしょう。

この辺はサマーウォーズは本当に素晴らしくて、登場人物全員がどこかしらで見せ場を持っていました。

サマーウォーズは少なくない数の登場人物がいます。

序盤こそ仮想空間で起きていることに付いて来れない大人のように描画されますが、後半は電気屋のおっちゃんは超ハイスペックPCを持ってきてくれて、漁師のおっちゃんは歴史的に不利な状況を覆した将軍の話を教えてくれ、自衛隊の兄さんはアンテナ車を貸してくれます。

登場人物がみな個性を発揮し、ひとつ以上の爪痕を残す。そしてそのそれが欠けてもラスボスは倒せなかったよね、という形でうまく物語がまとめられていました。

このときは細田守監督と脚本家の奥寺佐渡子さんが一緒になって脚本を書いていたようで、どうも監督ひとりで脚本を書くと投げやりな展開になる傾向がある…ような気がしています。

もちろん本当に一人で書いているわけではなくて、いろんな人が関わっているんでしょうけれど。

それでも竜とそばかすの姫の脚本はもう少し工夫がないとサマーウォーズには追いつけないかな、と思いました。

周りの大人が全く頼りにならない

本作品に登場する大人はほとんど皆無能です。

サマーウォーズでは問題が起きたとき、最初高校生たちだけの間で課題を解決しようとします。しかし困った時に大人が協力してくれたり、相談に乗ってくれて、主人公たちは問題を解決することができました。

現実でも自分たちの力だけで問題が解決できることは少なくて、大切なのは先生に報告したり、連絡したり相談する、ほうれんそうだったりする訳です。

しかし竜とそばかすの姫では、竜を特定するという課題に対して、主人公の親友がほとんど一人で竜のアカウントを特定、その後居場所を特定する際も高校生たちの間であっさりと解決してしまいます。

大人や年寄りは基本的にはインターネットに疎いというイメージを忠実に再現しているのかもしれませんが、そこはサマーウォーズのように別の切り口からアドバイスをする人がいても良かったんじゃないかと思ってしまいます。

合唱隊の方々や主人公の父親はほとんど見ているだけだったので。。

というか主人公の親友があまりにも無双しすぎている感がありました。異世界から転生してきたんでしょうか?

最後まで使われなかった謎の伏線がある

これは正直どうでもいいんですけど。。。

序盤から登場する実家の犬の前足は片方ありません。それでも犬はフツーに散歩していますが、見てる側としてはやっぱり気になってしまいます。

何かの伏線なのかなと思いましたが、最後まで特に触れられなかった。謎。

登場人物重要度ランキング

あまりにも活躍の機会がなかったキャラクターがいますので、その方々の供養を込めてランキングを作りました。

以下、ほとんど私の独り言です。

すず(主人公)

Sランク。歌うま星人。かわいい。

ヒロちゃん(主人公の親友)

Aランク。超有能な駒だが、よくよく考えると全然良いヤツじゃない。彼女が竜だったら面白かった。

しのぶくん(主人公の幼馴染)

Sランク。主人公を心配してくれるイメケンの王子様。見せ場が多い。彼が竜でも面白かった。

ルカちゃん(吹奏楽部の少女)

Bランク。スクールカーストトップで、主人公の味方かと思いきや敵、かと思いきや仲間だった。竜の特定にはほとんど寄与しない。時報の曲を聞き分けるのが得意。

カミシン(ボート部の少年)

Bランク。貴重なギャグ要員。クラスに友達がいなさそうな主人公がコイツに対しては何故かフランクに話すことができる。竜の特定にはほとんど寄与しない。景色から場所を特定するのが得意。

すずの父親

Cランク。主人公の母親の死後、主人公がほとんど口を効かなくなってしまうが、それを解決してくれたのは父の言葉や行動というより時間である。もう少し父親らしいことをしても良かった。

合唱隊の方々

Dランク。なぜ存在するのか分からない。せめて若くてかわいければ救いがあったのに…

Aランク。正体が判明したときテンションが上がるかと言われると、否。

竜の弟?

Bランク。知的障がい者であるような描画がされている。健全者障がい者によらず、皆等しく仮想空間を楽しめたら一つ壁がなくなって良い世界になると思う。

竜の父親(シングルファーザー)

Bランク。ラスボス。暴力はダメだけど、シングルファーザーで障がいを持つ子供を育てるのは大変だと思う。彼もまた救いが必要だったのではないだろうか。

まとめ

竜とそばかすの姫の感想を良い点良くない点色々と書かせていただきました。

後半の内容はマイナスな話が多くなってしまいましたが、少なくとも作画や音楽による演出は最高で、冷え切った私の心をちょっとだけ暖かくしてくれました。

お時間がある人は是非劇場に足を運んで、生で見ていただけたらと思います。

そして細田守監督の次回作、シンガーソングライター中村佳穂さんの今後は要チェックです!

以上、最後までご覧いただき、ありがとうございました。

映画

Posted by soya